骨粗鬆症の注射薬に「投与期間の上限」があるのはなぜですか?
すべての注射薬に一律の上限があるわけではない。テリパラチドは動物試験で骨腫瘍が認められたこと等を踏まえ製剤ごとに投与期間の上限が設定され、ロモソズマブは骨形成促進効果の上乗せが限定的なため12か月とされている。一方、デノスマブやゾレドロン酸には一律の上限はなく、定期的な骨折リスクの再評価で継続・休薬を判断する。投与期間の上限は「そこを超えると危険」という境界線とは限らず、安全性・長期有効性・臨床試験で確認された期間・作用特性が関係する。骨形成促進薬の終了後は骨吸収抑制薬への逐次療法が重要で、デノスマブは中止時の反跳性骨吸収・多発椎体骨折に注意が必要。
Q.骨粗鬆症の注射薬に「投与期間の上限」があるのはなぜですか?
A.すべての注射薬に一律の上限があるわけではありません。投与期間の上限には、「その期間を超えると危険」という意味だけではなく、安全性、長期継続時の有効性、臨床試験で確認された期間、薬剤の作用特性などが関係しています。
特に、テリパラチドやロモソズマブなどの骨形成促進作用をもつ薬剤では、明確な投与期間が設定されています。
薬剤によって「投与期間」の考え方は異なる
投与期間の上限=「そこを超えると危険になる境界線」とは限りません。
テリパラチドの投与期間に上限があるのはなぜ?
テリパラチドでは、製剤ごとに承認された投与期間が定められています。
背景の一つに、ラットを用いたがん原性試験で、投与量・投与期間に依存して骨肉腫を含む骨腫瘍が認められたことがあります。
ただし、
「上限を超えると、ヒトでも骨肉腫が増える」
という意味ではありません。
ヒトにおいて特定の投与期間を境に骨肉腫リスクが急増することが示されているわけではありません。
したがって、投与期間の上限は、非臨床試験で得られた安全性情報に加え、臨床試験で有効性・安全性が確認された期間などを踏まえて設定された承認上の使用期間と考えるのが適切です。
ロモソズマブが12か月なのは、安全性の問題?
安全性だけが理由ではありません。
ロモソズマブはスクレロスチンを阻害することで、
骨形成を促進する + 骨吸収を抑制する
という特徴的な作用を示します。
一方、骨形成マーカーの上昇は投与初期に大きく、その後低下します。つまり、骨形成促進作用が同じ強さで長期間持続するわけではありません。
そのため、ロモソズマブを12か月以上継続することで、さらに同じ程度の骨形成促進効果が得られるとは考えにくく、12か月を超える継続治療として有効性・安全性も確立されていません。
ロモソズマブは、
骨折リスクが非常に高い時期に骨量を増やす
↓
12か月で終了
↓
骨吸収抑制薬で維持する
という使い方をする薬剤と考えると理解しやすくなります。
投与期間の上限まで使ったら、骨粗鬆症治療も終了?
いいえ。ここは非常に重要です。
テリパラチドやロモソズマブで得られた骨密度増加などの効果は、その後何もしなくても永久に維持されるわけではありません。
そのため、
骨形成促進薬
↓
骨形成を促進し、骨量・骨強度を改善
↓
規定された投与期間を終了
↓
骨吸収抑制薬へ移行
↓
得られた効果を維持
という逐次療法(sequential therapy)が重要です。
骨形成促進薬を「期間限定の治療」として単独で考えるのではなく、その後の維持療法まで含めて一つの治療戦略として考える必要があります。
「投与期間の上限がない薬」は、ずっと使ってよい?
上限がない=無期限に何も考えず継続する、という意味ではありません。
デノスマブでは長期投与による有効性が示されていますが、継続中はONJ(顎骨壊死)やAFF(非定型大腿骨骨折)などのまれな有害事象にも注意します。
さらに重要なのが中止時です。
デノスマブを中止・大幅に延期すると、
デノスマブ中止
↓
骨吸収が急速に亢進
↓
骨密度低下
↓
椎体骨折、とくに多発性椎体骨折のリスク上昇
が問題となります。
そのためデノスマブでは、「いつまで使うか」と同時に、「中止するときに何の薬へつなぐか」を考えておく必要があります。
一方、ゾレドロン酸などのビスホスホネートでは骨への残留作用が長いため、一定期間治療した後に現在の骨折リスクを再評価し、継続または休薬を検討します。
薬剤師として押さえておきたいポイント
①「注射薬だから期間制限がある」わけではない
薬剤ごとに投与期間の考え方は異なります。
② 投与期間の上限=安全/危険を分ける境界線ではない
安全性だけでなく、長期継続による有効性、臨床試験で確認された期間、作用特性などが関係しています。
③ 骨形成促進薬は「終了後」まで確認する
テリパラチドやロモソズマブ終了後は、骨吸収抑制薬への逐次療法が重要です。
④「上限なし=いつでも中止できる」でもない
特にデノスマブは、中止・投与遅延による反跳性骨吸収と椎体骨折に注意が必要です。
POINT|「何年間使える薬か」だけではなく、「なぜその期間なのか」「終了後に何につなぐのか」まで考える。
参考資料・文献
- PMDA.各テリパラチド製剤、ロモソズマブ、デノスマブ、ゾレドロン酸 電子添文・審査報告書
- Gregson CL, et al. UK clinical guideline for the prevention and treatment of osteoporosis. Arch Osteoporos. 2022;17:58.
- Tsourdi E, et al. Fracture risk and management of discontinuation of denosumab therapy: a systematic review and position statement by ECTS. J Clin Endocrinol Metab. 2021;106:264–281.