円背(kyphosis)のある方が、経口ビスホスホネートを服用する時の注意点は?
円背の患者でも錠剤の食道通過が必ず遅れるわけではありません。ただし、高度円背やADL低下によって服薬時の体幹が半臥位に近くなる場合には、食道通過が遅くなる可能性があるため、食道粘膜障害に注意が必要になります。
Q.円背(kyphosis)のある方が、経口ビスホスホネートを服用するときの注意点は?
A.円背があること自体で、経口ビスホスホネートが服用できないわけではない。
重要なのは、錠剤を速やかに胃まで到達させることができ、服用後に上体を起こした姿勢を保てるかである。
円背のある骨粗鬆症患者23名を対象に、リセドロン酸35 mg錠と同じ形状の錠剤を用いて食道通過を調べた研究がある。
平均年齢72歳、円背角は中央値60°(25~85°)と比較的強い円背を含む集団だったが、円背の程度と錠剤の食道通過時間との間に関連は認められなかった。
平均食道通過時間は、
- 水50 mL:15.6秒
- 水120 mL:12.0秒
だった。
したがって、「円背がある=錠剤が食道に停滞する」と考える根拠はない。
別の研究では、50歳以上の女性20名を対象に、リセドロン酸またはアレンドロン酸錠を、
上体を起こした姿勢(erect)と45°の半臥位(semisupine)で服用した場合を比較している。
その結果、45°の半臥位では、上体を起こした姿勢より食道通過が有意に遅延した(P=0.043)。
また、一部のアレンドロン酸製剤では食道内で錠剤が崩壊した例もあり、4回中3回は半臥位で起きていた。
つまり注意したいのは、「円背があるか」だけではなく、実際にどのような姿勢で薬を飲んでいるかという点である。
円背のある方では、実際の服薬姿勢を確認する
特に高度な円背では、本人は「座っている」つもりでも、体幹の状態によっては上体が十分起きていないことがある。
そのため、
✓ 無理のない範囲で上体を起こして服用できるか
✓ 十分な量の水で服用できるか
✓ 服用後、決められた時間は横にならずにいられるか
✓ 飲み込みにくさ、嚥下時痛、胸やけなどがないか
を確認することが大切である。
なお、円背を無理に伸ばして「背筋を90°にする」必要がある、という根拠はない。構築性円背や椎体圧迫骨折がある場合、無理に脊柱を伸展させるのではなく、本人が安全に保持できる範囲で上体を起こすことを考える。
アレンドロン酸では服用方法を特に守る
アレンドロン酸では、食道・局所への副作用を減らすため、薬剤を速やかに胃へ到達させることが重要とされている。
具体的には、
- 起床後すぐに服用する
- コップ1杯程度の水(約180 mL)で服用する
- 噛んだり、口の中で溶かしたりしない
- 服用後少なくとも30分は横にならない
- 最初の食事を終えるまで横にならない
ことが求められる。
また、30分以上上体を起こしていることや立っていることができない患者には、アレンドロン酸経口剤は禁忌である。
POINT
円背そのものより、「実際の服薬姿勢」を見る。
円背があっても食道通過が必ず遅延するわけではない。一方、上体を十分に起こせない姿勢では食道通過が遅れる可能性がある。
そのため円背のある方では、単に「服用後30分横にならないでください」と説明するだけでなく、実際にどの姿勢で服用しているか、30分以上その姿勢を安全に保持できるかを確認することが重要である。
参考文献
- Perkins AC, et al. Esophageal transit of the weekly film-coated risedronate (Actonel®) placebo tablet in subjects with Kyphosis. Int J Pharm. 2006;311(1-2):20-25. doi:10.1016/j.ijpharm.2005.11.047.
- Perkins AC, et al. Esophageal transit and in vivo disintegration of branded risedronate sodium tablets and two generic formulations of alendronic acid tablets: a single-center, single-blind, six-period crossover study in healthy female subjects. Clin Ther. 2008;30(5):834-844. doi:10.1016/j.clinthera.2008.04.018.
- PMDA. アレンドロン酸錠 患者向医薬品ガイド/電子添文.