ビスホスホネートを何年も飲んでいる。「休薬期間(drug holiday)」は必要?
全員に休薬が必要なわけではない。経口BPで5年程度、静注BP(ゾレドロン酸)で3年程度治療した時点で、骨密度や骨折歴などから現在の骨折リスクを再評価する。骨折リスクが低〜中等度まで下がっていれば一時的な休薬(drug holiday)を検討し、まだリスクが高ければBPの継続または他の骨粗鬆症治療を検討する。「5年飲んだから休む」ではなく「5年経ったら見直す」という考え方。休薬中も定期的な再評価が必要で、デノスマブには同じ考え方は使わない(中止すると骨折リスクが上昇するため、別の骨吸収抑制薬への切り替えを含めた治療計画が必要)。
Q.ビスホスホネートを何年も飲んでいる。「休薬期間(drug holiday)」は必要?
A.全員に休薬が必要なわけではない。一定期間治療したら、まず「今も骨折リスクが高いか」を見直す
ビスホスホネート(BP)製剤は、長期間使用したからといって、一律に休薬する薬ではない。
目安として、
経口BP:5年程度静注BP(ゾレドロン酸):3年程度
治療した時点で、骨密度や骨折歴などから現在の骨折リスクを再評価する。
その結果、
骨折リスクが低~中等度まで下がっている
→ 一時的な休薬(drug holiday)を検討
まだ骨折リスクが高い
→ BPの継続または他の骨粗鬆症治療を検討
という考え方になる。
なぜ「休薬」という選択肢がある?
ビスホスホネートには、他の骨粗鬆症治療薬とは異なる特徴がある。
BPを長期間投与
↓
骨に取り込まれる
↓
中止しても、しばらく骨吸収抑制作用が残る
そのため、骨折リスクが十分低下した患者では、いったん投与を休んでも一定期間は効果が残ることが期待できる。
一方、長期間使用すると、頻度は低いものの、
- 非定型大腿骨骨折(AFF)
- 顎骨壊死(MRONJ)
などの有害事象が問題になる。
そこで、
骨折予防効果をできるだけ維持しながら、長期投与によるまれな有害事象を減らせないか
という考えから生まれたのが**bisphosphonate holiday(BP休薬期間)**である。
「5年飲んだら休薬」ではない
ここが最も重要である。
例えば経口BPを5年間服用した患者でも、
- 最近、脆弱性骨折を起こした
- 大腿骨近位部骨折・椎体骨折の既往がある
- 骨密度がまだかなり低い
- 高齢である
- ステロイドを使用している
- 転倒リスクが高い
などの場合には、休薬によって骨折リスクを高めてしまう可能性がある。
したがって、
「5年経過した」=「休薬する」
ではなく、
「5年経過した」=「治療を続ける必要があるか再評価する」
と理解するのが適切である。
何をみて判断する?
drug holidayを検討するときは、主に次の項目を確認する。
① 骨折歴
特に、
- 最近の脆弱性骨折
- 椎体骨折
- 大腿骨近位部骨折
- 複数回の骨折
があれば、骨折リスクは高いと考える。
② 骨密度(BMD)
特に大腿骨頸部・total hipのBMDを確認する。
例えば、BHOFのClinician's Guideでは、
T-score > −2.5 かつ最近の骨折なし
などを、休薬を検討できる「modest risk」の一つの目安としている。
逆に、
T-score ≤ −2.5
など、骨密度が依然として低い場合には治療継続を検討する。
③ 年齢・その他の骨折リスク
- 年齢
- 転倒リスク
- ステロイド使用
- 二次性骨粗鬆症
- FRAX
- 治療中に骨折していないか
なども含めて判断する。
高リスクなら、どのくらい継続する?
高リスク患者では、
経口BP:最長10年程度静注ゾレドロン酸:最長6年程度
まで継続を検討するという指針がある。
ただし「10年間必ず継続」という意味ではない。
定期的に骨折リスクと治療効果、副作用を見直しながら判断する。
休薬したら、そのままでよい?
休薬=治療終了ではない。
ここも重要である。
drug holiday中も、
- 新しい骨折がないか
- BMDが大きく低下していないか
- 新たな骨折リスク因子が増えていないか
などを定期的に評価する。
Endocrine Societyでは、休薬開始後も2~4年ごとに骨折リスクを再評価し、
新たな骨折BMDの有意な低下その他、骨折リスクを高める変化
があれば、予定していた休薬期間を待たずに治療再開を検討するとしている。
つまり、
BP開始
↓
数年間治療
↓
骨折リスクを再評価
↓
低~中等度リスク
↓
drug holiday
↓
定期的に再評価
↓
骨折リスク上昇
↓
治療再開
という流れになる。
BPの種類によっても違う
すべてのBPが、中止後に同じように作用するわけではない。
NOGG 2024では、中止後にBMD低下・骨代謝回転上昇がみられるまでの期間について、
アレンドロン酸:約2~3年リセドロン酸・イバンドロン酸:約1~2年
と報告されている。
ゾレドロン酸ではさらに作用が残りやすい。
したがって、drug holidayを考える場合には、「何年間飲んだか」だけでなく、「どのBPを使用しているか」も重要である。
デノスマブには同じ考え方を使わない
これは薬剤師として特に重要である。
drug holidayは主にビスホスホネートに対する考え方である。
デノスマブ(プラリア®)はBPと異なり、投与を中止すると骨吸収抑制作用が比較的速やかに消失し、骨代謝回転が急激に亢進する。
その結果、多発椎体骨折などのリスクが上昇することがある。
したがって、
「骨粗鬆症の薬を長く使っているから、一度休薬しましょう」
とBPと同じ感覚でデノスマブを中止してはいけない。
デノスマブを中止する場合には、BPなど別の骨吸収抑制薬への切り替えを含めた治療計画が必要になる。
薬局での確認ポイント
患者から、
「もう5年以上飲んでいます。ずっと飲み続けても大丈夫ですか?」
と相談された場合は、
服用期間だけで休薬の可否を判断しない。
まず、
- BPの種類
- 服用・投与期間
- 最近の骨折
- 過去の椎体骨折・大腿骨近位部骨折
- 最近の骨密度
- 年齢
- ステロイド使用
- 転倒リスク
- 大腿部・鼠径部痛などAFFを疑う症状
を確認する。
そのうえで、長期間治療しているにもかかわらず骨折リスクの再評価が行われていない場合には、
「長く飲んだから止める」のではなく、現在の骨折リスクを一度評価して、続けるか休むかを検討する
という視点で処方医へ情報提供する。
薬剤師として押さえておきたいポイント
drug holidayは「BPを長く飲んだから休む期間」ではなく、「骨折リスクが十分低下した患者で検討できる、一時的な治療休止」である。
- *経口BP 5年・静注BP 3年は「休薬する時期」ではなく、「骨折リスクを見直す時期」**と考えると分かりやすい。
高リスクなら治療継続のメリットが大きく、低~中等度リスクならdrug holidayを検討する。
そして、休薬した後も定期的な評価は必要である。
参考文献・ガイドライン
- Endocrine Society. Pharmacological Management of Osteoporosis in Postmenopausal Women. https://www.endocrine.org/clinical-practice-guidelines/osteoporosis-in-postmenopausal-women
- LeBoff MS, et al. The clinician's guide to prevention and treatment of osteoporosis. Osteoporos Int. 2022;33:2049-2102.
- NOGG. Clinical guideline for the prevention and treatment of osteoporosis. Updated 2024. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40921943/
- Cosman F, et al. Goal-directed osteoporosis treatment: ASBMR/BHOF task force position statement 2024. J Bone Miner Res. 2024;39:1393-1405. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39073912/